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PEファンド活用の意義と留意点

FBAAフェロー 川原浩

私はカーライル・グループというグローバル・プライベートエクイティ(PE)ファンドで十数年、投資先の発掘や投資後の企業成長に携わっています。

昨年このコラム(2016年10月26日コラム)で、FBAAでの先輩フェローである深沢氏が、PEファンドを活用するファミリービジネスが増えている状況について寄稿しています。

今回はその続編として「ファミリービジネスがPE活用を考えるうえでの留意点」について考えてみます。

いまだに、「ああ『ハゲタカ』ですね」と偏った印象によって誤解されている面もあるPE業界ですが、私は、正しく理解されれば、PEファンドは会社のある種の状況や発展段階での課題を解決するこのうえなく有効な手段になり得ると信じており、情熱をもって取り組んでいます。

では、PEファンドは何をするのか?

実は投資先や投資案件の成り立ちによっていろんなパターンがあるのですが、以下「ファミリービジネスの事業承継で、PEファンドの投資後も現オーナー社長が当面経営を担う」という前提で、また、できるだけ単純化してご説明します。

  1. PEファンドは投資候補先の事業を理解しオーナー経営者と議論を重ねることで事業の成長性と安定性を見定めます。
  2. ファンドからの資本と銀行からの借入れによって投資先企業を譲り受けます。ちなみにオーナーが一定の持分を持ちたい、或いは逆にすべて売却したいなどの希望にはかなり柔軟に対応できます。
  3. 投資後は、オーナー経営者と合意した事業計画を基に、企業価値を上げる様々な支援を行います。この「支援」は投資先が必要とする内容によって、またファンドの得意領域によって、文字通り千差万別です。例えば、私のいるカーライルでは海外展開のサポートや業種への深い理解に基づく経営貢献が特徴です。
  4. 通常5年前後を目途として経営改革を支援し企業価値を上げた後に投資はエグジット、すなわち、PEファンドが保有する株式を手放す時期を迎えます。投資先企業にとっては、上場にせよ、他社への売却にせよ、PEファンドのエグジットを機に次のステージへと進むタイミングです。

さて、ファミリービジネスにとって、PEファンドを活用するメリットは何でしょうか?

また、その時に考えるべきリスクは何でしょうか。特に、気になる「リスク」の面を詳しくご説明します。

メリット

・オーナー家内での持分の増強、逆にオーナー家内外における新株主の創出。また、税務メリットのある様々な持分承継手法の活用

・取締役会に客観性を導入し、経営管理の高度化を行うなど、経営体質の近代化

・次世代経営者を支える経営チームの育成

・投資の先行や人材獲得による経営のスピード向上

・海外展開・M&A支援等による事業強化

・経営を縛るさまざまな「しがらみ」からの解放・第二創業の活力

リスク

レバレッジ(銀行借入)

PEファンドは投資効果を高めるために投資金額の一部を銀行借入で調達します。この借入は高いリターンを求める資本に比べて非常に低い利率(年数%)ですので、投資先企業にとってもメリットがありますし、借入の返済によって資本価値が上がるのでファンドにとってもメリットがあります。

但し、大きな事業環境の変動があったとき、この借入が「返さなければいけないカネ」として経営の負担になることがあります。

一般に企業価値の半分強を借入れるケースが多いですが、どの程度の借入が許容できる水準なのかは、事業・業種の安定性、企業の発展ステージ、必要な設備投資・研究開発などによって変わります。借入れ水準はファンドとよく話し合って合意することが大事です。

エグジット

ファンドの投資を受ける以上、いずれ株式が手放されることは避けられませんが、それがだれにどのように渡るのかは企業にとって極めて大事なことです。典型的なエグジットは株式の上場か第三者への売却です。

■第三者への売却

「どういう相手なら良いか」逆に「どういう相手はやめてほしいか」など、最終的に書面合意までできるケースは多くありませんが、投資前によく話し合ってお互いの考えを理解し合うことが非常に重要です。

■上場

日本では「上場企業」であることをステータスと考えて、株式上場が好まれる傾向にありますが、上場するためには十分な成長を見せ、透明性・安定性のある経営体制・ガバナンス体制を作ることなどが必要です。

また上場後は、四半期ごとの決算開示を求められますし、望まない株主が株を持つことも止められません。ファミリービジネスが大事にする文化・価値観と上場企業として求められることにどう折り合いをつけるのか慎重に考える必要があります。

■経営陣の交代

もうひとつ、よく話題になるのが、「うまくいかないときは社長を交代させられるのか?」ということです。取締役や社長などの執行役が株主からの委託で経営している以上、その理屈は間違いではありませんし、事実そのようなケースもまま見られます。

しかし、同時に理解すべきことは、ファンドには企業を経営できないということです。つまり、業績不振で社長を交代させるのならば、今の社長よりもうまく会社を経営する人を見つけなければいけないのです。

独特の文化や意思決定構造を持つファミリービジネスにおいて、それは簡単なことではありません。

だからといってファンドには手は出せないだろう、という態度はお互いの溝を深めることになります。難しい状況だけに、問題に正面からあたり、それをファンドにも正しく理解させることで「この難局を切り開くリーダーは現社長である」と考える関係をつくることが重要になります。

どうでしょうか?

リスクであげた点はいずれもPEファンドとしっかりと話し合っていくことで回避できることだと思います。

ですので、PEファンド活用において最も大事な点は、そういうひざ詰めの話し合いを通じて信頼し合えるPEファンドをパートナーに選ぶこと、そして、もっと良い会社になるためにPEファンドの提供するリソースを「使い倒そう」とすることです。

より多くのファミリービジネスがPEファンドを理解してくれることを願っております。

ご質問がありましたらぜひご連絡ください。

Author Profile

日本長期信用銀行ならびにJPモルガン証券に勤務し、 東京及びニューヨークにおいて投資銀行業務に従事。 2001年よりGEエクイティにてプライベートエクイティ投資、 その後GEジャパン事業開発本部において提携・買収・事業企画、 またGE中央研究所の日本での展開を行う。 2006年にカーライル参画後は、 主にIT・ソフトウェア、テクノロジー、 電機、通信、メディア業界を中心に担当し、 数多くの投資を主導、それら投資先の非常勤取締役に従事して 企業価値の向上に努めている。 現在、一般社団法人日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)・ファミリービジネスアドバイザー資格認定証保持者(フェロー)
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