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ファミリービジネスに資するアナリスト視線での企業の見方

FBAAフェロー 藤野敬太

個人事業として、ファミリー(家庭)向けにファイナンシャルプランニングサービス、ファミリービジネス(家業)をはじめとした中堅・中小企業向けにアドバイザーサービスを提供しています。

また、前職でファンドマネージャーやアナリストとして10年以上日本株の運用に携わっていた経験から、アナリストレポートの執筆や、メディアへの寄稿も行っています。

アドバイザーサービスとアナリストは全く異なる分野のように思われるかもしれません。しかし、両方を経験する身としては、実際には共通点が多いと実感しています。

アナリストの仕事とは?

世の中で株式のアナリストと言う場合、その多くは、証券会社に所属するセルサイド・アナリスト、機関投資家に所属するバイサイド・アナリストとなります。

セルサイド・アナリストにとっての情報提供先は機関投資家にいるファンドマネージャー、バイサイド・アナリストにとっての情報提供先は社内のファンドマネージャーとなります。

ファンドマネージャーの側から見れば、セルサイド、バイサイドの両方に情報源があることになります。もちろん、ファンドマネージャーは、アナリストの力を借りずに、自分で情報を集めることもできます。

アナリストとファンドマネージャーの共通点

ファンドマネージャーの場合、投資対象となる企業の投資判断を1つ1つレポートにして人に伝える必要はありません。

レポートを作成する代わりに、マネジメントにお会いして得られた判断材料をもとに、その銘柄の株式を買うか、売るか、または保有し続けるかの判断を行い、顧客から預かっている資金を増やすことが求められます。ファンドの成績こそがアウトプットとなります。

アナリストとファンドマネージャーはアウトプットの形態こそ違えども、「この企業は、現時点で投資対象となりうるのか」という視点で、外部から企業を見ている存在だと言えます。

アナリストは外部から企業の本質に迫る存在

私は前職でいわゆる機関投資家と呼ばれる会社に12年間勤めていて、そちらで、バイサイド・アナリストとファンドマネージャーの両方を経験しました。

独立後、一般社団法人証券リサーチセンターにて、個人投資家向けに、上場して間もない新興市場の銘柄を紹介するアナリストレポートを執筆しています(誰でも無料で読むことができます)。

こちらのレポートでは、市場活性化のために「こういった事業を展開する企業が存在している」という情報を分かりやすく提供することが主目的です。

そのため、投資判断よりも、現在の事業が成り立った経緯、競争優位性の評価、今後の成長シナリオといった内容を伝えています。

こうした内容を書く関係上、マネジメントの方とは必ず面談するようにしています。1回の面談で約1.5~2時間の時間をいただき、その短時間で企業の本質に迫れるだけの判断材料を得て、レポートとしてまとめていきます。3期先までの業績モデルも作成します。

セルサイド、バイサイドとはいくらかタイプの異なるアナリストですが、外部の人間の視点で、その企業を評価することに変わりありません。

外部から企業を見る時に大事な視点

以前、「外部から企業をどう見るか」というお題で、ある勉強会にて講師としてお話する機会がありました。

アナリストまたはファンドマネージャーと呼ばれる人が、外部から企業のどこを見て、投資行動につなげているのか、という内容でした。

お伝えしたことは、「企業を見る際には、定量的な視点と、定性的な視点の両方を欠かさないようにしている」ということでした。

ここで言う定量的な視点とは、財務分析やコーポレートファイナンス面での分析などのこと、定性的な視点とは、「経営の質はどうなのか」、「経営者、マネジメントは事業環境や金融環境をどう見ているのか」、ということと捉えてください。

この勉強会の後、参加者から次のようなコメントをいただきました。

「証券アナリストというのは、財務分析など、定量的なものばかりで企業を見ているとばかり思っていました。でも今回の話を聞いて、定性的な視点のウェイトが思いのほか高いことに驚きました」。

「未来」を見据えるためには、「現在」を把握しなくてはなりません。「現在」とは「過去」に積み上げてきたことの結果です。だとすれば、その企業が紡いできた「過去」にこそ「未来」へのヒントがあるわけで、「過去」を深く理解することが、その企業の本質に迫る近道となります。

そのため、アナリストとして、ある企業に初めて訪問取材をする際、企業理念・経営理念、沿革、株主、マネジメント陣、といった定性的な側面について、しっかり調べていきます。「未来」へのヒントのなる「過去」に関する材料がたくさんあるからです。

当然、調べただけでは分からないことも多いですから、面談時間の半分以上を、これらの内容の深掘りに充てています。このようにして、その企業に対する見方の確信度を高めていきます。

そこまでしても、株価はなかなか思う通りには動いてくれませんので、数々の失敗をしてきました。それでも、前職の時より、数百社のマネジメントにお会いしてディスカッションをし続けてきたことは、失敗経験も含めて大きな財産となっています。

アナリスト視点がファミリービジネスの役に立つ

「過去を深く知り整理していくことで、企業の未来(≒将来の企業価値、株価)に対する確信度を上げていく」というアナリストのアプローチは、ファミリービジネスアドバイザーのアプローチにも大変有用だと考えています。

特にファミリービジネスの場合は、世代を超えての長い過去があるにも関わらず、きちんと整理されていないケースが散見されます。

ビジネスの部分にファミリーが絡むために、定量的に把握できる部分が少ない、複雑化していて整理しづらい、ということで、難易度が高くなっていることが関係しているかもしれません。

または、それなりに整理されていても、ファミリーメンバーの間で共有されていないケースもあります。

繰り返しになりますが、「現在」起きていることは、「過去」の結果なのですから、「過去」を整理して理解するだけでも、かなり深い現状把握は十分可能です。

そして、「現在」を知り、「未来」の理想像が定まれば、そのギャップを埋める道筋(戦略)も定まってきます。

ヒストリー(「過去」)を語れる経営者は、「未来」のストーリーも語れます。こうした「過去」から「未来」を紡いでいく一連の作業は、初めてマラソンの大会に出場する状況に似ています。

フルマラソンを自分の足で走らなくてはいけないのは分かっているけど、走りきれるかどうか不安に思うかもしれません。また、完走するためにどのような準備をすればいいのか分からないと感じるかもしれません。

そのような時は、ファミリービジネスアドバイザーという、ペースメーカーがいることを思い出していただき、そうした外部の力を活用することも検討していただいきたいと思います。

Author Profile

オフィス・ラコルドの代表として、 ファミリー(家庭)向けにファイナンシャルプランニングサービス、 ファミリービジネス等の中堅・中小企業向けに コンサルティング及びアドバイザーサービスに従事する。 また、(一社)証券リサーチセンターでアナリストレポートを執筆している。 大学卒業後、 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、 2001年から12年間、日興アセットマネジメントにて、 主にファンドマネージャーとして日本株の運用に従事。その後独立。 米国公認会計士(ワシントン州登録) CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定) 日本証券アナリスト協会検定会員及び同協会認定シニア・プライベートバンカー 一般社団法人日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)・ファミリービジネスアドバイザー資格認定証保持者(フェロー)
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