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ファミリービジネスの人材採用について

FBAAフェロー 高井明広

私は、東海地区の主に中小企業の人材採用支援の会社で19年間採用の現場に携わってきました。

クライアントの多くは同族企業であり、実際に採用の現場でそれが強みにも弱みにもなる場面を見てきました。

今回は中小企業のファミリービジネス採用について、お伝えしたいと思います。

採用ペルソナとのコミュニケーション設計

まず自社の採用を成功させる為に、私がお勧めするのは、自社の採用したい人物像、いわば採用のペルソナを作ることです。

この採用難の時代、満足できる求職者の数と質に出会えている中小企業は、大変少ないのではないでしょうか。

このような現状においては、ただ母集団(応募者)を沢山集めることではなく、

・採用するべき人材をしっかりと定め、

・面接を選考の場ではなく、外部人材と自社とのコミュニケーションの場として捉え直し、

・その人たちとの共感から価値共有をはかっていく

ということが大切になってきます。この手法は、入社後のミスマッチ回避の観点からも有効だと言えます。

このような採用を実現するために、自社独自の採用すべき人物のペルソナを作り、ペルソナとのコミュニケーションを設計することをお勧めします。

私たちがよく使っている採用のフレームワークです。

・Target/ターゲット(ペルソナ)は誰か?(どこで何をしている人か?)

・Insight/ターゲットが悩み&魅力を感じるポイントは何か?

・Benefit/そこに対して自社が提供できるメリットは何か?

・Fact/それを信じてもらえるような事実は何か?

・Creative/それはどうすれば伝わりやすいか?  ※1

 ※1: 青田努『採用コミュニケーションの原理原則』(オンライン動画学習サービス「Schoo」2016)

ファミリービジネスに対する求職者が持つイメージを払拭し、自社の強さ、魅力を伝える!

求職者に自社の強さや魅力を伝えるために、事前に自社分析をしておくことは非常に大切です。

ファミリービジネスでは、あの3円モデル(ファミリー、オーナー、ビジネス)から自社分析をすることで、非ファミリービジネスのビジネス一辺倒な分析よりも、深い自社理解につながります。

ここで注意点ですが、一般的な求職者が考えがちな、同族経営のネガティブなイメージについては必ず一部触れた方が良いと思います。

例えば、

・会社の私物化

・ガバナンスの欠如

・規律なき身内の関与

・時代変化の不適応…などの事柄について、

自社の現状をきちんと言及をすることが、特に中小企業では大切なことです。

そしてこれらに言及することは、一方で、ファミリービジネスの強さ・魅力を、求職者に伝えることにもなるのです。

・創業の精神、企業理念が浸透している

・長期的視野に立った経営

・商品、サービスを「得意分野」に絞り込んでいる

・創業家、ファミリーの永続への強い執念

・無駄を戒めお金を大切に使う

・安定性重視の財務戦

・ステークホルダーとの長期的関係重視

・強い社員、幹部社員を育てている

・他社との差別化にこだわりがある  ※2

※2:西川盛朗『長く反映する同族企業の条件』31p、65p(日本経営合理化協会出版局、2012)

これらのファミリービジネスの強さ・魅力の視点を参考にして、自社独自の魅力を整理し言語化することは、前述した採用のコミュニケーションにおいても、大変重要なことだと思います。

私が親しく交流させていただいているある企業で、このような例があります。

名古屋市内に本社を持つ、創業50年、従業員25名の印刷業。社長は3代目の同族企業です。

この企業では、採用活動時の求職者に訴えかけるポイントとして、

創業の精神、企業理念があり、社内に浸透している

・「高い品質と技術力」に対する創業者の誇り

・社内外での印刷技術に対する勉強会への取り組み

・同業から頼られる存在

・他社がやりたがらない印刷をやるのが自社のポリシー

創業の地、地域との関わりを大事にしていること

・創業と地域社会との縁、その歴史

・地域社会での具体的な貢献

・町の広報の印刷業務

・公共関連の仕事の取り組みなど

長期的な視野に立った経営、安定性重視の財務戦

・ファミリーによるオーナーシップの安定性

・極力借金を抑え、自己資金を基本とするオーナーの考え

・中期経営計画と若手・非ファミリー幹部の育成プラン

などを積極的に語りかけ、良い人材採用をされています。

何よりもこのポイントを自社独自の価値として捉えており、ここに共感してくれる人が、採用したい人であると、社長は仰っています。

私がファミリービジネスの3円モデルや、ファミリービジネスの強さと魅力についてお伝えするまでは、業界について、自社の売上げ、仕事内容、待遇の話ばかりで、思うような採用はできていませんでした。

それどころか、これらの価値が社長には当たり前すぎて、自社の強さ・魅力になっていることに気がついていませんでした。

長期的人材育成からみた採用

これは私見ですが、中小のファミリービジネスの採用戦略として、即戦力を求める中途の人材採用よりも、育成を前提とした新卒・第二新卒の人材採用の方が、結果として成功する傾向性があると思います。

中小企業は実際のところ、現場での即戦力の必要性や入社時期の問題で、新卒採用よりも中途採用に向きがちです。

しかしファミリービジネスの優位性の一つである長期的な経営視点と企業の永続性の観点から、人的資源に対する長期的な投資が可能なはずです。

即戦力採用よりも素材や潜在力を見るような採用に切り替え、長期的育成の視点に立って採用を考える方が、人材獲得競争の中でも、利点が多いと思います。

(もちろん、企業規模、業界、職種、時期によっては、経験者のある中途採用の方が向く場合が十分にあります。)

具体的な利点として

・新卒者は経験がない分、社風・自社のやり方・ルールになじみやすいと言えます。

・また一から覚える姿勢があるため、期待成果が少ない段階で多職種の経験を積ませることが可能です。

その結果、全社視点や顧客視点が身につきます。

・ゆっくりと長期的にOJTを行えるため、言葉化されにくい暗黙知・企業理念・ノウハウ・技術の伝承が行え、企業の根幹であるDNAの伝承に役立つ。社員のロイヤルティも上がります。

・後輩出現効果で後輩指導経験を積めて、マネジメント力が上がる。

・リクルーター効果で、社内に理念浸透が促され、暗黙知化したものの形式知化が進みます。

Author Profile

http://www.meidaisha.co.jp

株式会社名大社 ソリューション事業本部 取締役本部長  1973年生れ、岐阜県美濃市出身。 2001年大学卒業後、株式会社名大社に入社。 営業部門にて、東海地区の企業に対し新卒採用、中途採用の支援を行う。 その後、営業マネージャーの傍ら、イベント事業責任者、Webサービスの開発業務等を担当。 現在は名大社の役員・事業責任者としてWebサービス、リアルイベント、インターンシップ、人材紹介の領域での新しい採用支援サービスの開発に従事。 一般社団法人日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)・ファミリービジネスアドバイザー資格認定証保持者(フェロー)。
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