famibiz > FBAAコラム > FBAA第20回セミナー「日本スターバックス成功の舞台裏」

FBAA第20回セミナー「日本スターバックス成功の舞台裏」

日本ファミリービジネスアドバイザー協会

ページ: 1 2 3 4

リーダーとフォロワー

起承転結の「承」ですけれども、先ほど申し上げた三角形のH2O、このマネジメント・チームが確立して、アメリカでも伸びて成功パターンが見え、次はというときに、やっぱり世界中に出していきたいという大きな夢があったんですね。なぜかは聞いていないのですが、向こうが最初は日本だということをもう決めていたんです。

それで、日本への進出は決まり、某証券会社系のニューヨーク事務所を通してシンクタンクが立ちました。そうすると先ほどの僕の分析と同じでロジカルに分析をすると「総合商社と組みましょうよ」とか「大手の流通会社がいい」とか「いや、大手のコーヒーメーカーと組んだ方が」と、そういう候補を専らリストアップするんですね。

シュルツやビーハーやオーリン・スミスは、コーヒーを愛しているわけじゃなくて、ベンチャーで、ライフスタイルでやってきているから、その価値観を共有できるのかと非常に逡巡していました。そこに角田雄二、そして鈴木陸三がシアトルに行ったものですから、そこでもうこいつらだという話になった。

それで、50/50の合弁企業設立となったのですが、ここで重要なのは、ただ単に50/50になったことだけでなく、リーダーとフォロワーが一緒に組むときに大事な、大きな目標を共有すること、「BHAG(ビーハグ)」を共有したことです。

皆さんの大半はリーダー的な立場の方でいらっしゃるか、リーダーに対するアドバイスをしたり、付加価値を出したりする右腕的な方だと思うんですが、この20年ぐらい日本でもとにかくリーダーシップ、リーダーが大事だともううるさいぐらいですよね。

アメリカは、昔からそうですが、実は、バーバラ・ケラーマンという専門家によれば、リーダーシップの定義はもう1,500以上、研究者の数ぐらいあると。理論としてだけでも40あると。別の研究者は4,000から6,000あると説明するので1,500というのもまだ少なめです。つまり、正解がないテーマではないか、という問題があります。

スタバ

さらに別の研究者が言うには、リーダーシップは、実はあまり理解が進んでいないと。最も理解が進んでいない組織行動学分野におけるテーマであると認めてしまっています。あるいは先ほどのケラーマン、彼女はリーダーシップビジネス、セミナーをやってリーダーを育成する活動もしていますが、あまり成果が上がっていないと。これも認めてしまっています。

お仕事されている方は、自分がいないと駄目だと思いますよね。部長や課長や、プロジェクトリーダーだったりすると。でも、風邪で休んでも仕事が粛々と回っていることはよくあって「あれ? 実は自分はそんなに必要なかったのかも」という、嬉しいような悲しいような体験をすることがあるんですが、これはまさにリーダーがいてもいなくてもあまり関係がないという、そういう調査もあります。そもそもリーダーシップを発揮する人がいなくても組織の中にそういうことが組み込まれているので、ある程度できてしまう要素があるとも言われております。

もう一つ、リーダーとフォロワーの関係でご紹介したいのが、歴史的な視野ということです。これもケラーマンの著書に出てくる話ですが、少なくてもこの2500年ぐらいの西洋の歴史を振り返ると、一貫してリーダーの力が衰えてフォロワーが力を得ていっている、これが歴史の大きな動きなんだと言っております。

今、世界の主流の政治社会体制は民主主義ですよね。民主主義ができる前は封建制であったり、独裁的な権力者がいたりという時代で、それが変わってきた。マイノリティが権利を主張してそれが得られるようになってくる。つまり1人の偉い人、権力を掌握した人と、無垢な民、無知な民という関係性ではなく、民が底上げされて権力者の力が衰え、横一線に並ぶ流れが出てきたのが2500年の歴史、と捉えられるわけです。それを踏まえると、先ほどの動画でデレク・シヴァーズが言っていた次の発言の含蓄がちょっと変わるかなあと思っています。

「最大の教訓はリーダーシップが過大評価されているということです。全員がリーダーになるべきだとよく言いますが、それは効果的ではありません。本当に運動を起こそうと思うなら、ついて行く勇気を持ち、他の人たちにもその方法を示すことです。」

最初のフォロワーになり、続くフォロワーにどうしたらいいかを示す、ここがとても大事なんだ、というメッセージです。それをまとめると三つぐらいの原則があると思います。リーダーとフォロワーの関係は、上司、部下の組織における決められた関係ではないんですね。強制力はなく、むしろフォロワーがリーダーを選ばない限り、リーダーは成立しないんですね。

じゃあ、リーダーはフォロワーの仕事を受け入れなきゃいけないかといったら、拒否権はあると思うんですね。「お前さん、ついてきてほしくないよ」と。でも、「あなたがいいから一緒に来てください」といくら誘っても、このリーダーにはついていきたくない、納得できない、となるとついてきてくれない。お仕事ですから言うことは聞いたふりをするかもしれませんが、昇進したときに部下が自分についてきてくれるかどうか不安になりますよね。そういう人は、まだリーダーとして認められていないことを本質的にわかっている。「強制はできない」、これは非常に大事なポイントだと思います。

それから後先の関係ではない。つまりリーダーが孤独な存在として先にいて、フォロワーが後から生まれるのではなく、旗を振っている若者はただの「バカ者」だ、という意味合いなんです。彼がリーダーになるのは、最初のフォロワーが現れてから。つまりセットで登場する。リーダーとフォロワーというのは分けられない一つのシステムとして結合された要素だということです。これが二つ目のポイントだと思います。

申し上げたようにリーダーとフォロワーは対等であると。再び言うと、スターバックスとサザビーが合弁企業となったように対等なんだと強調したいと思います。

p32

この図は、スターバックスコーヒージャパン株式会社は、各親会社が50%ずつ株式を持つ上に資金投入も50%ずつ、さらに日本での銀行借り入れの親会社保証も50/50でやると、ここまで得た契約内容です。出てきた利益が配当で戻せるようになれば、それも50/50でやろうと。さらにロイヤリティを取るものも50/50でと、全部、名実ともにそうしたんですね。結局今の三つのポイントをそのまま実践し、完全対等合弁事業にしたことが成功の基盤になったと思っています。

リーダーとフォロワーの関係は、今の話で十分に理解いただけたと思うのですが、モデルチェンジの時期に来ていると思っています。

命令をして服従する旧来型の組織や体制がまだ多いと思うのですが、この働く組織の軸になるのはリーダーが中心にいて、フォロワーが下や周りにいる関係です。リーダーは答えを知っていてアドバイスをし、答えを教える。質問したり指示を待ったりするのがフォロワー。業務はフォロワー中心でリーダーは新聞を広げて待っているという図式です。

リーダーは代わりに結果責任を負うけれど、うまくいけば称賛され、評価も受けて実を得られる。そもそもフォロワーというのはジュニアの存在だからリーダーに育ててもらうんだという関係でしたが、今世の中はダイナミックに変化をしていて、リーダーが常にすべて答えを知っているとか、一番経験があるというのはありえない。そんなのはよほどラッキーな業界以外には存在しないんですね。

ではリーダーは何をするかというと、ビジョンを提出する。ハワード・シュルツが「コーヒーってこんなに素晴らしいんだ」、それを受けたビーハーが「体験なんだよ、お店は」と。そういう、いわば啓発されるようなビジョンを出すのです。リーダーにはもちろん人物的な魅力がありますが、フォロワーはリーダーそのものよりも、リーダーが提出するビジョン、それを一緒にやりたい。あの踊りは楽しいんだという、そこを選択する関係になっていく。つまり真ん中にビジョンがあり、リーダーもフォロワーもその周りで一斉にビジョン実現のために活動しているというのがニューモデルの姿です。

そこでは答えはリーダーもわからないので、何をするかというと、適切な問いかけをする。するとフォロワーが、その問いかけについて自分で探求し、調べ、行動し、こうじゃないかと仮説的な答えを出していく。「ああ、そうなのか。じゃあ、それについて実験してみよう」、「さらに調べてみよう」と一緒に探求していく。ここが非常にポイントになります。

最終的には結果責任というのは、もうチーム全体で負わなければいけない。しかし、リーダーというのは社内外、組織内外に対して説明責任を負うことは必要ですので、その立場は一義的にリーダーのものになっていく。

こうやって果実はWin-Winで共有するということと、ここも強調したいのですが、この現在の新しいモデルでは、リーダーはフォロワーに育ててもらうということがあります。

フォロワーの存在、ハワード・ビーハーの存在でハワード・シュルツは偉大なCEOになれたんですね。ビーハーが現れなかったら本当にコーヒーオタクとしてイル・ジョナーレを10何店舗やって終わっていたかもしれない。それぐらい決定的な意味合いがあると思います。

ということで、縦の関係を前提とする上意下達型、滅私奉公型が伝統だとすると、新しい関係は横につながる、まさに対等な関係であります。そこではフォロワーというのは結構、いや相当たてつきます。でも、絶対的に自分は味方である、リーダーを助ける、と。

実はもう一つ面白いエピソードがあります。スターバックスはシアトルの会社ですけれども、そのシアトルに『ビジョナリー・カンパニー』の著者、ジム・コリンズが住んでいるそうなんですね。それで、このコリンズさんとスターバックスはずっと勉強会を開き、啓発されて、自分たちは永続できるような素晴らしい、ビジョナリーな会社になりたいと思ってきた。『ビジョナリー・カンパニー』ではいろいろと含蓄のあることを言っていますが、特にフォロワーシップを実現していく経営には、それがスターバックスの一つの根本的な姿ですが、この三つが特に大事だと思っています。

p36

一つ目は「バス理論」です。バスの行き先を決める従来型のリーダーシップに対して、最初に誰がバスに乗るのか、そのメンバーを決める。そのメンバーの化学反応というか、起きる状況を見て「だったら向こうにいこう」と。つまり仲間が大事だと。リーダーとフォロワーのチームに誰がいるのか、それによって行先が変わってしまうという話が1点目ですね。

二つ目は「BHAG」という、大きな夢を掲げることが大事、ということ。

そして最後は最も本質的で「時を告げる」のではなくて「時計を作る」ということ。この三つをジム・コリンズは言っていた。こういうことを半分は想像で、半分は事実として彼らは勉強してきたと特にハワード・ビーハーから詳しく聞いています。

おさらい的ですが最初のバスの話です。リーダーの仕事というのは魅力的なバス、つまりビジョンや戦略を作って人々にアピールすること。リーダーは「あなたはちょっと降りて」という拒否権はあるといえばあるが、乗ってくれるのはあくまでも乗客なので、命令して「君、乗りなさい」「あなた、来てください」とは言えない。ですから、それだけ魅力的なバスにする必要がある。お互いの意思で選び合うということです。

ではどうやって選ぶのか。ジム・コリンズは『ビジョナリー・カンパニー2』の中で、専門知識や学歴や業務経験よりも性格とか基礎的能力の方が大事だと言っています。僕の本からも引用すると、まさに性格と基礎的能力においてサザビーが選ばれた。もし経験であればコーヒービジネスはやったことないですから。何百店舗もお店を出したこともないです。日本の市場のことはファッション屋、ライフスタイル屋として知っているけれども、こんな巨大な仕掛けの経験はないですから、安全を考えたら違う人たちを選ぶべきだった。でも、『ビジョナリー…』においては、そうではなく性格が合うか、本当に一緒にやっていけるコンピテンシーがあるかどうかを見るという話がありました。

これはスターバックスのホームページにある表現ですが、グローバルな成功について、その国際的な環境を展開するパートナー企業がいて初めて自分たちは成功できたと公式に掲げています。実は日本モデルが世界中に広がっていったのがその姿だったんです。その日本モデルというのは、先ほど言ったように50/50で真に対等な関係だということです。普通はブランドオーナーが権限を持って、このとおりにマーケティングしろ、こうやっていい、よくないと話を決めますが、全部、パートナーシップ、話し合いでどうするか決めていく。

日本のスターバックスの社長だった角田雄二はどうだったか。角田雄二さんは、サザビーの創業者のお兄さんです。ということは、彼が社長である限りサザビーに利益誘導をすることは可能なわけです。細かいことまではシアトルはわかりませんから。でも、雄二さんは一切しなかったですね。

もう、こっちが腹が立つぐらいサザビー側のことを考慮してくれない。かといって、シアトル側のことだけを考慮するお雇い経営者かというとそうではなくて、あくまで「スターバックスというブランドはこうでしょ」と。「だから日本にあるスターバックスはこうあるべきだし」と。この人極端ですから「シアトルでやってることおかしいよね」と言い出したんですよ。「ワンブランドで世界でやってるのにおかしいじゃないか」と言うと、現場レベルでは喧嘩になるんです。最後は必ずシュルツが出てきて「雄二さん、おまえの言っていることは正しい」と、最後は通っちゃうんですね。そのぐらいフェアに、ブランドのために活動をした人物で、彼がいなかったら日本での成功はかなり間引きされたと思います。

次はBHAGです。BHAGというのは、Big Hairy Audacious Goalという英語の略ですが、直訳すれば大きくて身の毛もよだつような大胆不敵な目標、となります。

皆さんも、3年とか5年、場合によっては10年程度の中期計画のとき、バーッと線を引いて「この辺まで成長できればいい」とされますが、大体は過去の実績から、年率10%は伸びるはずだけれども15%は厳しいよねとか、そういう積み上げです。が、それはBHAGじゃないんですね。それはあくまでも過去のトレンドから延ばした「こうなるといいよね」という期待値です。BHAGというのは、最初から「我々はこれを達成したいんだ」と。そうやって掲げたものはわかりやすく言えば根拠はないんですね。我々は「日本市場はこうだ」と分析はしますけど。

まだ何もない、0のときに1,000店舗出そうという話になったんです。我々はせいぜい30店舗ぐらいのお店しかやったことがないのに1,000店舗と言われても、なんだかよくわからないと。では、なぜその数字かというと、アメリカが当時、日本の2倍ほどの人口でちょうど400から500店舗まで来ていて、そこで2,000店舗出したいと言っていた。彼らの最初のBHAG、大きい目標が2,000店舗だったんですよ。「だったら日本も1,000店舗ぐらいできるんじゃないの」と言われて「うん、できるかも」と。本当に今から思うといい加減な話ですが、でもそうやって掲げた夢にワクワクし、絶対やりたいなと思ったところがミソですね。

具体例として『ビジョナリー・カンパニー』に出てくるのはジョン・F・ケネディが60年代中に月に人間を送り込んで無事に戻ってくる、アポロプロジェクトを実現すると言ったことですね。彼は暗殺されてしまいますがアメリカはものすごく鼓舞されて、実現してしまうんですね。これがBHAGの典型的な例だと言われていますが、我々にとってもそういう意味合いはありました。

それで1,000店舗という話になりましたが、契約書には一切それは書いていないんです。あくまでもインフォーマルな話し合いの中でそうできたらいい、としてきたのであって、契約書では1年から1年半で10店から12店、いろんなタイプのものを実験的に出し、その内容を確認しながら出店の可能性を追求していこう、それだけだったんです。

次ページへ

ページ: 1 2 3 4