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FFI 2012年コンファレンスレポート

FBAA理事 武井一喜

昨年2012年10月、FFI(Family Firm Institute)の2012年コンファレンスに参加してまいりました。
今回はブリュッセルで4日間開催され、30カ国から約300名が集まりました。

毎年アメリカ国内で行われますが、4年に1回はヨーロッパで行われています。

通常は400名~500名の参加ですが、今回は300名弱。
やはりアメリカ人の参加が減るようです。

逆に今回目立つのはアジア勢です。
香港、シンガポール、マレーシア、タイ、韓国からの参加が多い中、日本からは私と理事長の西川氏の2名、日本勢を増やしたいという思いが募ります。

〜FFIとは〜

FFIは、1986年、学者、アドバイザー、経営者によって設立されました。
同時期に設立されたFBN(Family Business Network:本部はスイス)が経営者を対象にしているのに対し、
FFIは、ファミリービジネスにアドバイスを行う専門家と研究者を対象にしている組織です。

「ビジネス」と「家族関係」という複雑にからみ合うファミリービジネスに対するアドバイスには、学際的なアプローチが必須というコンセプトを掲げています。
そのため、1500名のメンバーは、税理士、会計士、弁護士、経営コンサルタント、金融、保険関係者、ファミリーオフィス関係者、
セラピスト、カウンセラー、経営系、組織論系、心理学系学者、研究者など、多岐にわたります。

FFIの特徴は以下の4点です。

1)世界56カ国から専門家が参加する国際組織であること

2)機関紙Family Business Reviewは、ファミリービジネス関連の学会誌として最も権威あるとされていること

3)ファミリービジネス・アドバイジング及びファミリーウェルス・アドバイジングの認定プログラムを通して、学際的な知識やスキル習得の機会を提供していること

4)会員間のネットワーキングを重視していること

年一回のコンファレンスは、世界中からファミリービジネスのコンサルタントが集まる機会です。
ここに集まる人たちは普段は同業者であり、お互いに競争相手ですが、この場では互いの成果を分かち合い、新しい手法や発見を交換し合う、寛大さにあふれています。

業界自体がまだ若い、ということもあるのでしょう。
26年前にFFIが結成されてから、特にこの10年間で会員数は倍に増え、アメリカでも認知度が高まりつつあるところです。
会場では互いに協力して認知度を高めたいというエネルギーを感じます。

〜2012年コンファレンス〜

コンファレンスのプログラムは、総会、種類のセミナー、基調講演3つ、約44コマのプレゼンテーション、ワークショップ、学術研究発表、2つのパーティーなど大変充実した内容で構成されています。

例えば総会前日に行われるセミナーは、ファミリービジネス・コンサルティングの概要を学ぶものや、高資産の富裕層に対する業際的アプローチ、ファミリーガバナンスに関するもの、コンサルタントのクライアント診断ツールなど、実践的なテーマで半日から1日かけて学ぶプログラムです。

毎年のことですが、今回のブリュッセルでも、新しいコンセプトや実践的な手法を仕入れることができました。参加者の中には著名な先生方もいらして、一般メンバーと一緒にワークショップで議論している様子を拝見し、その学ぼうとする姿勢に感銘を受けました。

〜ファミリービジネスからファミリーエンタープライズへ〜

ここ数年でFFIでは「ファミリービジネス」という言葉があまり使われなくなり、その代わりに「ファミリーエンタープライズ」と呼ばれることが多くなっています。

この背景には、26年の歴史の中で、FFIで扱われる課題や問題意識が変化してきていることがあるようです。

設立当初、FFIにおいても大きなテーマは事業承継でありました。
事業承継については数々の研究と実践の事例から、そのアドバイスのあり方について、メンバー内で大方のコンセンサスが出来ています。

その結果、単にファミリーとビジネスだけを見るのではなく、ファミリーが持つべきさまざまな機構;ファミリー評議会、オーナーシップ評議会、フィランソロピー、ファミリーアカデミー、ファミリーオフィス、持株会社などを含めてファミリービジネスシステム全体を構築するようになります。

さらに、事業会社を持たずに、資産運用をメイン事業とするファミリーもコンサルティングの対象になることが多いものです。

このシステムを、ファミリービジネスと呼ぶよりも、「ファミリーエンタープライズ」と呼ぶほうがふさわしい、というわけです。

〜日本のファミリービジネスは大丈夫か?〜

今回特に強く印象に残ったのは、ファミリー企業のオーナー達の発表です。

3人のベルギーFBオーナー(家長)を招いて行われたプレゼンテーションでは、各ファミリーが行っている活動を発表しました。

ファミリーの標語を決めて冊子を作る、ファミリーメンバーの起業を奨励する仕組みづくり、講師を招いてのファミリー勉強会、ファミリー専用WEBで情報共有、ファミリーアカデミーで次世代を育成するなど、ファミリー全体の統治とともに、企業家精神の育成に真剣に取り組んでいます。

この様な努力を重ねているファミリーが支えるビジネスは、必ず強い競争力を持つだろうと感じるとともに、日本のビジネスファミリーでこの様な努力をしているところがはたしてどれほどあるだろうかと考えた時、「老舗大国日本」の看板をいつまで維持できるのだろうか、と思わざるを得ませんでした。

FBAAが果たすべき役割の大きさを、改めて実感した次第です。

2013年FFIコンファレンスは、10月にサンディエゴで開催されます。
同じ志を持つ各国の仲間と出逢い、互いの発見やアイディアを交換できるのは、本当に力づけられる体験です。
共に健闘をたたえ合い、また新たな日常へと旅立つ場として、多くのFBAAメンバーの皆さんのFFIコンファレンスへのご参加を期待しています。

Author Profile

http://www.wellspring.co.jp/

アジアで初のFFIフェロー、日本人初のFFIアドバンスド・ファミリービジネス、ファミリーウエルス・アドバイザー資格認定証保持者。慶応義塾大学経済学部卒。コロンビア大学ビジネススクール経営学修士(MBA)。経済産業省「地域経済におけるファミリービジネスに関する研究会」委員(平成21年度)。キャラクター商品メーカーを経て家業の寝具製造卸会社に勤務。基幹業務システム設計導入、新規事業立ち上げの後、4代目社長。その後IT関連の起業に参加。’03年、ファミリービジネスコンサルティングのWellSpring設立、代表を務める。ファミリービジネスを対象にコンサルティング・研修・執筆活動を行っている。著書:「同族経営はなぜ3代で潰れるのか?~ファミリービジネス経営論~」:クロスメディア・パブリッシング 他
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